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    • 「めがねよ、ありがとう作文」よ、ありがとう!審査員インタビュー

      第4回目のめがねフェスから始まった「めがねよ、ありがとう作文」。
      めがねに対する感謝の気持ちをテーマに、めがね愛に溢れた素晴らしい作品が毎年全国から集います。
      昨年2022年には、受賞作品を原作とした東京藝術大学大学院映像研究科によるショートムービーも公開されました。

      単なる作文にとどまらない「めがねよ、ありがとう作文」について優秀作品の選考に関わった方々(AKUSHU BOOK & BASE 店長/めがね作文 ゲスト審査員の石田美香さん、山元眼鏡商会代表/めがね作文選考員の山元敏孝さん、福井県眼鏡協会 事務局員/めがね作文選考員の竹川侑里さん)にお話を伺いました。

       

      今までの受賞作品で、どの作品が印象に残っていますか? 

      山元 私たちは作り手・売り手なので、正直エンドユーザーの意見を聞く機会が本当に少ないんです。「めがねよ、ありがとう作文」を通じて、こんなにもめがねに真剣に向き合って、めがねに助けられ、思い出が生まれているんだということを知り、心を込めて作り届けなければ!と一層思うようになりました。中でも、認知症にかかったおばあちゃんが、めがねをかけると孫の顔がわかるようになるという作品がありましたよね(2020年 最優秀作品 よもぎさん)。私はそれが一番インパクトがありました。めがねは見るための道具ですが、見られているもの、そして印象に残るものなんだなと改めて気付かされました。

      石田 私は「街の本屋さん」の審査員の一人として関わらせてもらっています。特に印象に残ったのは、結婚式の時にウェディングドレスにめがねをかけた花嫁さんの作品(2021年 入賞 佐藤ひなさん)で、とても共感しました。実は、私も自分の結婚式の時にコンタクトレンズが苦手だったので、衣装合わせの時にウェディングドレスでめがねをかけていたんですね。すると、家族や友人が取った方がいいよって言うんです。でも、私はどうしてもめがねじゃないと困るので、めがね屋さんにドレスに似合うめがねがないか相談したんです。一生懸命探して下さって、当日はめがねで結婚式に出ることができました。私も小さい頃からめがねをかけているので、作文を読みながら自分の体験を辿ることが多いですね。

      竹川 眼鏡協会の職員として、応募作品を全て読ませていただいています。作文の中には、めがねの自分についてコンプレックスを抱いている方のエピソードが結構あるんですよね。私も同じように同じようにコンプレックスがあり、めがねを使わずにコンタクトレンズだったのですが、眼鏡協会に入ってからめがねに触れる機会が多くなり、気分によってめがねとコンタクトレンズを併用するようになりました。このお仕事をしていると、素敵なめがねがたくさんあることや、作り手の方が一生懸命めがねに向き合っているお話を伺う機会が多くなり、「めがねってこんなにいいものなんだ!」と自然と思えるようになりましたね。また、「めがねよ、ありがとう作文」から使い手の方のめがねへの愛情を受け取ることも多くて、毎回バラエティに富んだエピソードを通じて学んだり、感動したり、楽しませていただいてます。

       

      AKUSHU BOOK & BASE 店長/めがね作文 ゲスト審査員の石田美香さん

       

      どんな方が応募されていますか?また、選考会の様子を教えてください。

      竹川 未就学児である4,5歳から8090代の方まで、まさしく老若男女のみなさんから作品の応募があります。ご夫婦で一緒に送ってくださる方や、家族で1通ずつ書いてまとめて応募してくださる方もいて、本当にめがね愛に溢れた作品がポストに届いています。福井県内はもちろん多いですが、全国各地からいただいています。

      山元 「めがねよ、ありがとう作文」の選考会は、シーンと静まりかえって、みんな真剣に聞き入っています(選考に残った作品はFM福井の堀謙氏が朗読を行っている)。毎年必ず一つ、二つは胸にくるものがあり、涙が出ないように堪えています。作品が読めることは楽しみですし、私たちも刺激になっています。めがねを通じて、それぞれの人生があり、つながりが生まれていることを知る時間ですね。全体的に感動系が多いので、お笑い系があってもいいかもしれない(笑)。

      石田 私は選考会には出席せず、「街の本屋さん」の一人として個別に審査させてもらっているので、自分の中での基準としてはテーマである「めがねに対する感謝を表しているもの」になっているか、あと本屋なのでどうしても起承転結がまとまっているかということも気にしながら読んでいます。最終的には、自分もめがねユーザーなので、一番共感したものを選んでいますね。

       

      山元眼鏡商会 代表/めがね作文選考員の山元敏孝さん

       

      ご自身の「めがねよ、ありがとう」エピソードを教えてください。

      竹川 応募の作品にも多いのですが、私自身が「初めてめがねをかけた日」はよく覚えていますね。私は小さい頃からめがねが必要だったのですが、あまり目立ちたくない性格なので、眼鏡をかけて登校する時にドキドキと緊張した記憶があります。でも、友達の反応は思ったほどではなくて、案外すんなり前向きに受け入れてもらえたことが、印象に残っています。

      石田 私もめがねユーザーなので、思い出やエピソードが身近にたくさんあります。先程のウェディングドレスの他にも、例えば姪っ子が私のめがねのフレームがキラキラするのを見て、すごく褒めてくれたことがあって、嬉しい気持ちになった思い出があります。

      山元 小学校の頃、昔は連絡網があって連絡先と一緒に親の職業が明記されていたんですが、「眼鏡卸売業」と書かれているのがコンプレックスでした。当時はめがねって良いイメージがなかったので、嫌で嫌でしょうがなかった。でも、時代が変わってめがねがオシャレなアイテムになり、視力が良い人も積極的にめがねをする人が出てきて、自分の仕事にも誇りを持てるようになりましたね。あと、「めがねフェス」そのものに感謝したいですね。毎年楽しませてもらってますから。めがねを好きな方が全国から集まってきて、明るく楽しい雰囲気の中で手作り感もあるイベントは他にないと思います。

      福井県眼鏡協会 事務局員/めがね作文選考員の竹川侑里さん

       

      「めがねよ、ありがとう作文」を応募される方にメッセージをお願いします。

      竹川 まだこの作文コンクールのことを知らない方もたくさんいらっしゃると思うので、ぜひお気軽にご応募いただきたいと思います。全部、しっかり読ませていただいています!ただ、締め切り間際になると、ドドドドっとまとめて届くので(笑)、余裕を持って送ってもらえると助かります。

      石田 感動にこだわらずに、普段の何気ないエピソードでも全然良いと思います。ストレートな気持ちを素直に書いてみるのも良いんじゃないでしょうか。

      山元 めがねは老眼なども考えると、一生に一度はかけなければならない道具かもしれませんよね。度が入っているめがねにあまり囚われないように、いろいろな角度、雰囲気の作文を読んでみたいです。個人的には、サングラスが主役でファンキーなものがあっても良いと思います(笑)

       

      「めがねよ、ありがとう作文」を通じて、めがねは老若男女、地域も時代も超えて、それぞれの人生にまでおよび、人と人をつなげているということを教えてくれます。めがねを介して、お互いにありがとうと言い合える優しい関係性が、これからも続くことを願いたいですね!

      取材・文 佐藤実紀代(HOSHIDO)