小さい部品も、志はいつもでっかく!メガ展部品メーカーインタビュー
めがねは、様々な部品で構成されています。
その一点一点も、この鯖江の産地で汗水流しながら製造している人々がいます。
今回のめがねフェスでは、「メガ展」と称して部品にも焦点を当てたブースが出展します。
偶然にも異業種からめがね業界に飛び込んだお二人の、熱く熱く語るインタビューをどうぞ!
簡単な自己紹介、会社の紹介をお願いします。
畑中 畑中金型製作所の代表取締役を務めています。(このインタビューの数日前に)ちょうど申請を出したところでして、まさに今事業承継申請中です。元々、植木屋として10年働いて、キャリアを積んでいたところだったのですが、縁があって全く畑違いの異業種に入ってきました。右も左もわからない手探りの中でやりながら、今年で8年目になります。
小須田 株式会社ササマタで営業企画室長をしています。弊社では「クリングス」「ノーズパッド」と呼ばれるめがねの部品を主に製造しております。滋賀県出身で、京都でアパレル、旅行代理店で添乗員、出版社など、あらゆるジャンルの業種を経験してきました。転職の際に、今の社長に声をかけてもらったことがきっかけで鯖江に引っ越しまして、鯖江には4年目となります。鯖江に来てから1週間後にはコロナの時代に入ってしまって、結構大変でした。偶然ですが、異業種からの転職という意味では、畑中さんと同じですね。
メガ展ではどんな展示をされますか?
畑中 弊社はメタル部品のプレスの金型製造を行う会社なのですが、今回のメガ展では一本のチタンの部品から、どうやってめがねのブリッジになるのかを展示する予定です。金型だけ展示をしても、その前後の流れってみなさんわからないですよね。一度プレスすれば出来上がると思われがちなんですが、一回潰して、二回潰して、三回潰して、それから削るという作業など、細かい工程が意外とあるんです。会場では、機械を動かすことはできませんが、物を見ながら説明させてもらおうと思っています。「粘土細工みたいにできるんでしょ」って言われることもあるんですが、そうじゃないことを伝えたいですね(笑)。バングルにできる部品もありますし、実際に触れられる製品も用意する予定です。
小須田 数多い種類のはこあし(クリングス)を展示をする予定です。また、ちょうどめがねフェスの時期にクラウドファンディングで製作するめがねも登場するので、ブースで展示させてもらいます。仕事を豆知識を提供できるようなブースにしようと考えているんですが、ちょっと新しい情報やマニアックな情報がたくさんありますので、気軽に話しかけてください!
お二人とも異業種からの転職だったということですが、めがね作りのおもしろさを教えてください。
畑中 植木屋の時は、樹木の単位がセンチとかメートルだったのですが、めがね業界に入ってからナノやミクロンの単位に急激に小さくなったのは戸惑いましたね。めがねはとても細かい作業が多いのですが、メタル部品は特に公差に厳しいので、100分の5ミリの差でプレスの正確性を出しています。新型から設計して金型の「にく」の入り方がバシッと決まって、トリミングやバリ抜きがうまく行った時は気持ちいいですね!また、同じことを言うのにいろいろな業界用語があって、それを覚えるのも面白かったですね。仕事をしながら現場で覚えていきましたが、今でもどれが正解なのかわからない言葉もあります(笑)。
小須田 僕は企画担当なので、現場の人とのやりとりを行うことが重要な仕事になります。でも、企画したものが一発でうまくいくわけではなくて、作ってみたら「もうちょっとこうだな」とか言いながら調整していくんですね。製作の人としっかり意見をぶつけ合うことでブラッシュアップして、完成に近づけていくことが楽しいなと思います。コロナ禍ではめがねだけではなく、マスクに関する製品も企画をしたことがあったのですが、社内でモニタリングをしてもらって意見を聞きながら、一つのアイテムに対して進化の過程があることが面白いと感じます。
また、ものづくりの高い技術をもつ職人さんを目の当たりにすると驚いてしまうんですが、本人は「こんなの普通だよ」ってやってくれるんですよ(笑)。でも、よく聞くと、その技術はもうその職人さんでしかできなかったりして、ものづくりってやっぱり“人”なんだなと思います。職人さんがこだわってくれたおかげで、ここまできたんだ!とこちらも熱い気持ちになりますし、毎回感動しています。会社から出た商品は自分の職人の責任だというプライドを間近に感じ、メイドインジャパンの製品を応援したくなります。
めがねの産地についてどんなことを期待しますか?
畑中 単刀直入に言うと、現状のやり方を続けていたら、10年後は難しいかもしれないという危機感を持っています。前職の造園業は歴史が1000年と言われているんですが、めがねの業界が100年、200年、300年と続くためには、産地が一体となって特色をみんなで考えていかないといけないと思います。大量生産の時代が終わった今、業界が横でつながって技術や情報を共有しながら、さらに高い技術や品質を高めていきたいですね。
小須田 産地としてはめがねは元々分業が大きく、産地自体が大きな工場のようなところはありますが、これからは一丸となるイメージで共通認識を持っていくと、もっと良くなると思います。僕は鯖江という産地は、ものづくりへのこだわりが大きくて譲らない部分もありながら、それぞれの個性を活かして柔軟な部分もあるロックな地域だと感じています。日本全国どこを見てもこの地域しかないので、一緒に盛り上げていきたいなと思います。
畑中 先代の方々が築いたものがあるからこそ、若い世代で変化を起こして、みんなで新たに魅力的な発信を行なっていきたいですね。
めがねフェスの思い出はどんなことが心に残っていますか?
畑中 僕は青年部にも入っているので、めがねフェスにはめがねBarなどで参加させてもらっていました。コロナ禍で中止になったこともありましたが、思い出としては、きゃりーぱみゅぱみゅを遠巻きに見れたことが一番ですかね(笑)。まゆちゃんのステージも良かったですよね。全国からすごいコアなめがねファンに来ていただけて、日本中、世界中にめがねファンがいることに気づかさせてもらえました。
小須田 弊社は去年からめがねフェスに参加させてもらっています。最初は部品屋だから出てもしょうがないと言われていたんですが、マスクの商品があったので出てみたんです。出店してみると、名古屋からわざわざ来られためがねファンもいて、本当に驚きました。個性的なめがねをかけている人も多くて、そういった方々と出会えることで自分の仕事に誇りを持てる時間だなと思います。
畑中 僕たちの会社で作るのは小さい部品なので、メーカーの名前を伝える術はなかなかないのですが、小須田さんの言うとおりやりがいを感じられる時間になっていますね。違う業界から転職される時、期待しているよと言われたのですが、めがねフェスで感じるように、いつも新鮮な見方でいられるようにしたいなと思います。
小須田 ササマタが作っている製品だと言える機会がなかなかないので、めがねフェスを通じて、現場にいる人たちの熱気を伝えられたら嬉しいですね。
全国のめがね好きのみなさんにメッセージをお願いします。
畑中 皆さんがいつもかけているめがねは、名前が出ることはありませんが自分たちが丹精こめて日々作っています。一度、めがねフェスを通じて産地に来て、技術を見に来てください!
小須田 めがね好きの方なら、鮮度の高い産地に来なきゃダメですよね!ぜひ作りたてピチピチの部品やめがねに会いに来てください!
どんな部品にも、その後ろには長い長い、熱いストーリーがあるということが、お二人のお話からも強く伝わるインタビューでした。
ぜひ、めがねフェスで、作りたてのめがねを手にとって、この新鮮な産地の熱気を体感してください!